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呪い(リオンとフィース)

「フィース様のことを好きになるわけないじゃないですか。

された仕打ちを除いても普通に嫌いですよ」

 

私がそうルシャンデュ・セルマに言っていたのをフィースは聞いていたらしい。

家に戻るなり腕を引かれた。しゃがんで視線を合わせてくる。

 

「なあリオン。

俺はお前に随分優しくしてると思わねえか?」

 

「……まあ確かに、殺しかけたのにお咎めなしですもんね」

 

「なんでだと思う」

 

「番いだから?」

 

私の返答に彼は唇を歪め皮肉っぽく笑った。

 

「違えよ。

分からないか? 期待してるんだ……万が一の可能性を信じて」

 

フィースが冷たい指で私の頬を撫でた。

……そうか。もうこの男には、私がこの男を好きになる可能性に賭けるしか後がないのだ。

 

「そんなの、あり得ると思います?」

 

「……無いと思うがな」

 

彼は私の顔を手で押さえ身を乗り出した。

 

「だがよく考えろ。

その可能性があるからお前はこうして自由に暮らしていける。

可能性が万に一つも無いなら、やり方を変える」

 

「……やり方、って」

 

「リオン。

俺は、本当はお前を閉じ込めて一生出したくないんだ。

誰の目にも触れないで、誰とも話させないで、俺だけしか関わりが無くなればいい。

そうしないのはお前のことを愛しているからだ。

……だが同じくらいお前が憎いよ。

俺をここまで苦しめるお前が憎くて憎くて堪らない」

 

緑色の目がギラギラと輝いていた。

背筋が震える。

彼は力の抜けた私の体を片腕で抱き締める。

 

「覚えておけ。お前が拒絶すればするほど俺の正気は失っていく」

 

なんとか体を動かしてフィースの体に腕を回した。

彼は小さく「それでいい」と呟く。

 

私の体の震えは止まらない。

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