人の話を聞かない(エメリンとラプター)
「ラプターなんか嫌い」
私はそう言って顔を背けた。
彼の恋人、そして部下となって早数ヶ月。
あまり関係の進展が見られないと聖女・ミナミ様に相談したところ男を操るテクニックなるものを教えてもらった。
わざと心にもないことを言ったり、他の男と仲良くしてやきもきさせるのが良いらしい。
暫く待ってみたがラプターからの返事はない。
チラリと彼の顔を伺うと苦々しい顔でこちらを睨んでいた。
「……また、聖女様の入れ知恵か」
何故分かったんだ。
私は驚いた顔をしてしまうが慌てて澄まし顔をする。
だが最早彼にはミナミ様からのアドバイスと分かってしまったらしい。
溜息を吐いて「あの人の言うことを真に受けるな」と言った。
「……なんでそう思うんですか」
「長年のカン」
「嫌いって言われてもなんとも思わない?」
「あのな、お前今まで俺に何回言ってきた?」
……そういえば喧嘩のたび言ってるかもしれない。我ながら子供っぽいなと反省する。
「たしかに……。
好きでもわざと嫌いって言ってやきもきさせれば進展するって聞いたから……」
「あー……なるほど。好き……」
「でもやっぱり、私そんな器用じゃないから難しいですね……。
相談相手間違ってたかもしれません」
「……雲行きがおかしくなってきたな」
相談相手、と聞いて一番最初に思い浮かんだのがレイオレピスだ。神殿長を魅了している彼女なら男を操るテクニックなるものも知っているだろう。
だが……スキンク様とどうして恋人同士になったのかを考えると難易度が高い。生やす……?
いや、やめておこう。
それ以外に頼れるひとというと殿下は論外で……カロテス様だろうか?
しかし彼に以前恋人の有無聞いたところ「これ以上大事な人を失いたくないですから」と据わった目でこちらをまっすぐ見つめて言ってきた。
ダメそうだアレは。
あと頼れるのは……
「なあエメリン」
「なんです。後にしてください。
今相談相手を探すのに忙しいんです」
テイラートは論外だ。奥歯をあげる羽目になる。
いっそスキンク様に聞いたら男心が分かるだろうか。
「……目の前に俺がいるのに相談する意味あるのか……?」
ラプターの呟きが私の脳に届く頃には、私は部屋を出てスキンク様の所にいた。
そうか。本人に男心をくすぐられることを聞けば良かったのか……。
スキンク様にそう言うと「直接、関係の進展を望めばよろしいかと」と呆れ声で指摘されてしまった。